◆赤葦くんと待ち合わせ
(なにあれ、超イケメン…!カ、カメラ…!)
デートの待ち合わせ場所にいたのは、コーヒーを片手にベンチに座る赤葦くん。私は思わずその場で立ち止まって、スマホのカメラ機能を起動させる。パシャリと小さなシャッター音を数回響かせて、まるで絵画のような風景を切り取った。うん、すっごくイケメン!これは待ち受けにしよう。スマホに収められた赤葦くんをうっとりと眺めていると。
「こら、遅刻しといて何してんの」
「痛っ…って、赤葦くん」
いつの間にかベンチから立ち上がって私の傍まで来ていた赤葦くんに額を小突かれた。遅れたことを素直に謝れば、彼は仕方ないというに笑って許してくれる。あ、今の笑顔も素敵です。
「ん?何これ、俺?」
「うん、赤葦くんがあんまりカッコよかったから撮っちゃった!」
そう言って画面の中の赤葦くんを眺めていると、手の中からスマホを取り上げられてしまった。何するのと彼を見上げてみれば、赤葦くんは拗ねたような顔で。
「今は一緒にいるんだから、こんなの見ないで」
「…もしかして赤葦くん、嫉妬してる?」
「……」
無言は肯定とみなします。自分の写真に嫉妬するって、なんて可愛いひと。ご機嫌斜めになった彼の左手に自分の右手を絡めてみると、ぎゅっと包み込んでくれる。返してもらったスマホは大人しくバッグに入れて、本物の赤葦くんを眺めながら街を歩きだした。