◆片頭痛もち彼女と赤葦くん
「……ぅ」
「?あ、もしかして頭痛い?」
「……ごめん。もしかしなくても頭痛いです」
片頭痛というやつは、時と場所を選ばずにやってくるものだからタチが悪い。部活に忙しい京治がせっかく作ってくれた時間なのに、本当に申し訳ない。目の奥に心臓が移動したようなドクンドクンという拍動を感じて、こめかみに手を当てる。
「薬持ってる?」
「んー…忘れた…」
せっかくのデートだからと少しでもおしゃれしようとバッグを変えたのが災いして、常備している薬を忘れてしまった。時間が経てば治るというものでもないので、薬は必需品なのに。最悪。
「大丈夫、俺持ってるから」
そう言って、京治が差し出してくれたのは私が常用している頭痛薬だ。あれ、なんで。
「京治、頭痛もちじゃないよね…?」
「がそうだから、持ち歩くようになったんだよ。ほら、水あるから飲んで」
ペットボトルのキャップを外して薬を飲ませてくれる京治は、なんてできた彼氏なんだろう。彼に言われるままに錠剤を水で流しこむと、少し気持ちが落ち着いた。
「ちょっとだけ、寄り掛かってもいい…?」
「どうぞ」
頭をポスンと京治の左肩に乗せたら、彼はその腕で私の髪を優しく梳いてくれる。心地よくて、思わず頭が痛いことなんて忘れてしまいそう。頭痛が治まったら、今度は私が京治を甘やかしてあげるから。今はもう少しこのままで。